再び足を動かして階段を降り始めた時、あいつの顔が上がった。


俺と目が合った時「ヤバい」なんて顔してたな。




「ご、ごめん!」


「何が?」


「いやっ、これは!違うくて!」




とぼけたフリをする俺と、テンパる綾瀬。


パッチリした目の脇にはまだ涙が残っていて、相当なことがあったんだろうと思った。



シンと静まる階段。


何してんだろ、俺。


さっさと行けばいいものを、何でこんなとこで足止めしてんだよ。




「何で泣いてんの。」


「…え、」




いつから俺はこんなにお節介になったんだ。


泣いてるやつの理由聞くなんて。




「カバン取ってこいよ。」


「え?」


「帰るぞ。」




俺を見上げる綾瀬は、自然と上目遣いになっていて。


泣いていた綾瀬の目が余計にキラキラ輝く。




「でも、先生に呼び出されてるんじゃ…、」


「んなのいいよ。」


「でもっ…、「行くぞ。」」