中学に上がってから、教室に入って勉強をしたことなんか一度もない。
シャーペンすら持って来ない俺は、冬になった今もクラスメイトの顔すら知らない。
大人も、結局はみんな同じだ。
邪魔な俺らを捨てて楽な方へ、自分の欲望の方へ進んでいく。
もう、そういう奴らにはうんざりなんだ。
「わっ!」
っと…、
中坊ながらも色々考えながら、龍也の便所待ちをしていると、走ってきた誰かとぶつかった。
「ご、ごめんなさい!全然見てなかった!大丈夫?」
慌てて俺に謝ったのは、噂の綾瀬。
染められた茶色い髪と綺麗な目が特徴的なこいつは、自分よりも先に俺の心配をしてきた。
「人の心配する前に、自分の心配しろよ。」
「え?」
変わったやつ。
何故かわからないけど、気がつけば俺はそんな変わり者が落とした荷物を拾っていた。

