【 奏多side 】



「奏多さんのことで辛い経験とかなかったんすか?」


「あったあった。たくさんあったよ。」




幹部室を出ると、たまたま聞こえてきた会話。


それは桃とリョウの声であって、俺との昔話をしていた。




「でもさ、その度に助けてくれんの。」




あー、そんなこともあったな。


あの時じゃ想像もできなかったよ。



こんなに1人の女に振り回されて、喜怒哀楽が激しくなったりするなんて。


情けねーかもしれないけど、俺は桃を守るためだったら何だってできる。


生きる意味のなかった俺が、今お前のために生きてんだよ。



それって奇跡だと思うし、俺にとっては大きい出来事だったと思う。