「悪ぃな。」




気がきく春翔とその隣にいる私は、逆方向へバイクを走らせる龍也に手を振った。




「帰りますか。」


「そうだね。」




そして私と春翔も、家の方向にバイクを走らせた。


春翔のバイクはみんなとは違って静かな音。


無駄にスピードを出したりしないし、ザ!安全運転!って感じ。




「ありがとう。」


「またいつでも連絡して下さいね。」




明日から冬休みに入る私たち。


春翔は私を気にして、そんなことを言ってくれた。


でも、もうそんな心配はいらないよ。




「ねえ春翔、」


「どうしたんですか?」


「私ね…、思い出したよ。全部。」




バイクに跨ったままの春翔は、私の言葉を聞いて固まる。


無理もない。


だって、ずっと1番近くで見てきてくれたんだもん。


どれだけ迷惑かけたかもわからない。




「いっぱい迷惑かけてごめんね…。」


「顔あげてくださいよ。」




頭を下げる私に、優しく春翔はそう言った。