恥ずかし…。




「よし、そろそろ帰るか。」


「そうだね。」




夕日が海に沈み始めた頃、私と奏多くんはバイクに跨って来た道を戻って行く。


龍也とは違ってゆっくり走ってくれるバイク。


後ろに乗っている間に考えるのは、海で見た奏多くんの表情。


誰かを思って愛おしそうに話す彼の顔。


思い出すと、彼に回す手の力はギュッと強まっていく。


まだその子は彼女じゃない。

私だって、これくらい甘えていいよね。


人間はワガママだ。

都合よく、そして賢く、自分の欲望のままに生きている。


残酷だ。


恋愛なんて。




「ありがとう。」


「また明日な。」


「うん、また明日ね。」




家まで送ってもらった私は、彼の背中が小さくなるまで見送る。