「奏多くん、片耳しか開いてないの?」


「ん?」


「ピアス。」


「あー、そうそう。」




放課後、お弁当のお礼と言って連れてきてもらった海。

風が強くて、ほんのり潮の匂いが心地いい。




「これ片耳用ってもらったんだけどさ、くれた子が両耳用と間違えたんだって。」


「えー、何それ。」


「鈍臭いっしょ?」




ふたり揃って海岸に座って海を眺めている。


奏多くんは、右耳につけてあるピアスのことを遠くを見て楽しそうに話していた。




「だからそいつのためにさ、開いてなかったけど開けたんだ。」


「へえ…、その子のこと好きなんだ。」


「うん。」




愛おしそうに奏多くんは頷いた。




「多分、一生好き。」




少し照れくさそうに笑った彼から目を逸らした。

自分で聞いておいて、返ってきた言葉に勝手に傷つく。


…やっぱり好きって厄介モノだ。




「桃は?そのネックレス。」




沈黙を閉ざしたのは、気にもしていなかった話題でホッとした。




「退院した時に病院の先生が渡してくれたの。大事そうに握ってたよって。」


「そっか。」