その手が離せなくて











「座って」


小さな会議室に入ると、部長がドサリとソファに腰かけた。

その目の前に促されるまま、おずおずと腰かけた。


先程と同じ様な重たい空気が流れる。

それでも、一度大きく息を吐いた部長がようやく口を開いた。


「何を言われるかは、分かっているか」

「――」

「望月」


下を向いて、ギュッと膝の上で拳を握ったまま口を噤んだ私に部長が催促する様に名前を呼んだ。

その気迫に負けて視線を上に向けると、私をじっと見つめる部長の強い瞳があった。


「取引先の一ノ瀬君との事だ」

「――」

「彼の奥さんから電話があった――・・・・・・」


先輩と同じ事の顛末が話される。

彼と不倫している事と。

私と彼を二度と会わせてほしくないとの事。