その手が離せなくて


どこか冷たい視線を感じながら、部長の姿を探す。

キョロキョロと辺りを見渡す度に見えたのは、好奇の視線と軽蔑した様な視線。

いつもの事務所のはずなのに、そこに私の居場所はないようで、一刻も早く仕事に取り掛かって周りの視線や声を遮断したかった。

そんな時。


「望月」


聞こえた声に振り返る。

そこには、探していた人物が立っていた。


「話がある。こっちに来てくれ」

「・・・・・・はい」


予想通りの言葉だけど、やはり心が締め付けられる。

先輩の言っている事が本当なら、きっと私はこのプロジェクトから外される。


彼に会う事は無くなる。

偶然に出会う事すら、もう許されない。

――もしかしたら、この会社にもいられないのかもしれない。


長い廊下を部長の後ろに続いて、歩く。

まるで死刑台に向かう様な気持ちだと思って、視線を下げた。