「んっ」


そんな時、突然肩を引き寄せられて塞がれた唇。

あまりに突然の事で、目を閉じる事も忘れた。


「今日一日よろしくな」

「・・・・・・ビックリした」


唇を離して、ふっと息の下で微笑んだ彼。

そのどこか余裕そうな姿に、悔しさを覚えて唇をすぼめる。

それでも、ぽんっと私の頭に手を乗せてから、彼はハンドルを握って車を走らせ始めた。


「今日は自然を見に行くぞ」

「自然?」

「毎日こんなコンクリートに囲まれていたら息苦しいだろ」


微かに赤くなった頬を隠れて冷やしていると、彼がそう言って横目で私を見た。

その言葉に、一気にワクワクした気持ちが湧き上がって頬が上がる。


「今日一日、宜しくお願いします! 一ノ瀬さん!」



――そして、私達の初めてのデートが始まった。