「はいっ」
『おはよ』
「お、おはよう!」
『着いたぞ。下にいる』
少しだけ裏返った私の声を聞いて、彼がクスッと笑う。
最近テンションが抑えきれなくて困る。
それでも、そんな事気にせずにバックを勢いよく肩にかけて玄関を飛び出した。
「おはよう」
エントランスを抜けて、少しいった所で黒の車が止まっていた。
ゆっくりと歩み寄って運転席を覗き込むと、彼がいた。
「おはよ。乗って」
私の顔を見て柔らかく笑った後、彼はご丁寧にも運転席から手を伸ばして助手席の扉を開けてくれた。
そういう小さな優しさが女心をくすぐる。
急いで助手席に乗り込むと、なんだか一気に恥ずかしくなって思わず下を向いた。
だって、隣にいる彼があまりにもかっこよかったから。
「何、どした」
「いえ、なんでも」
「下向いてるけど」
「なんでもないから。ほ、ほら! 出発!」
そんな事を悟られまいと必死に前を指差すが、彼にはバレバレだったみたい。



