「それに、一緒に桜も見れたし」


胸に抱きかかえた桜を彼に見せる。

彼の言う通り、あの日咲き乱れていた桜とは比べものにならないくらい小さいけど、それでも――。


「私だけの桜なんて、贅沢だよね」


私の為だけに、彼が買ってきてくれた桜。

私を想って、買ってきてくれた桜。

その気持ちが、嬉しくて堪らなかった。

私の事、少しでも大切に思ってくれている気がして、嬉しかった。

例え、二番目でも――。



「ありがとう。一ノ瀬さん」


ニッコリと笑って、少しだけ背伸びをする。

チュッという音を立てて、彼の唇にキスをした。


そんな私を見て、一瞬ポカンとした顔で固まった彼。

それでも、すぐに精悍な顔を崩して笑顔を作った。


「ありがとう」


大きな手が私の髪を撫でる。

そのまま頬に降りてきた手を、そっと上から包み込んだ。