だけど、彼は悪くない。

ちっとも、悪くない。


「大丈夫。私は大丈夫だから」

「――」

「一ノ瀬さんは、間違ってないよ」


家族が一番で、私は二番。

それは間違っていない。

ううん。そうしなきゃ、この関係は続かない。

そういう事、理解しなきゃ。


「だから、もう謝らないで」


本当は壊れてしまいそうな程、辛かった。

胸が張り裂けてしまいそうで、例えようのない孤独感に襲われた。

世界に自分だけ取り残された様な、まるで必要のない人間の様に思えて苦しかった

涙が止まらなかった。

もう、こんな関係終わりにしなきゃって思った。

だけど――。


「今日、会いにきてくれたじゃない」


会いに来てくれた。

私に、会いに来てくれた。

それだけで、あの日の苦しみなんて消えてしまった。