渡されたソレを受け取って、思わず歓喜の声を上げる。

包み紙に包装された、桜。

何本か細い枝が包み紙に包まれていて、その先にピンク色の桜が少しだけ咲いていた。


「綺麗」

「もう東京の桜は散ってしまったから」


どこか申し訳なさそうにそう言った彼を見て、首を横に何度も振る。

今にも零れ落ちそうな涙を耐えて、ニッコリと笑顔を作った。

わざわざ、私の為に花屋さんで選んでくれたんだ。

それが、嬉しくて堪らない。


「夜桜、見れて良かったです」

「――」

「私達で独占ですね」


胸にギュッと一度抱いて、その桜を見下ろす。

綺麗な花びらをそっと指で撫でて、その香りを嗅いだ。

その瞬間。


「――っ」


突然、桜の花ごと私を抱きしめた一ノ瀬さん。

ギュッと後頭部に片手を添えて、腕の中に閉じ込められた。


「悪かった」

「――」

「辛い思い、させた」


どこか小さく、そう呟いた彼。

その言葉に、先日の事を思い出して少しだけ胸が痛んだ。