その手が離せなくて


再び訪れた静寂。

萌は顔を伏せて、ぎゅっと私の手を握っていた。

それでも、しばらくした時、一度握る手に力が入った。

そして。


「バレたら・・・・・・もしバレたら、どうするの」


震える萌の声に、伏せていた瞳を持ち上げる。

すると、萌も同じ様に顔を上げて私の瞳をじっと見つめ返した。

真っ直ぐで、進撃なその瞳に、一瞬言葉を失う。

それでも、ふっと息の下で小さく笑って。


「覚悟はできてる」


そう言った。


この恋が始まった瞬間から、覚悟はできている。

誰にも知られてはいけない恋。

それは、見つかった時、何もかも失ってしまう事を意味している。


きっと私は失うだろう。

今まで築いてきたもの、すべて。


だけど、そんなリスクを負ってまでも、あなたと一緒にいたい。

彼の側を離れる事なんてできない。