その手が離せなくて


ペタリと2人、キッチンの床に座り込む。

ひんやりと冷たいその床が、どこか夢の中にいる様な心を現実に繋ぎ止めてくれていた。


「ねぇ!!」

「――」

「柚葉っ!!」


私の肩を強く揺さぶる萌。

大きく体が揺れる度に、涙が散った。


「目を覚ましてっ。間違ってるんだよっ。柚葉も、一ノ瀬さんも!」


ねぇ、私は夢を見ているのかな?

創られた偽りの世界で生きていたのかな?


だけど、今まで生きてきた中で一番幸せだと感じたの。

例え偽りだったとしても、その中にいたかったの。

温かい、彼の腕の中に。

だって、そこが私の『幸せ』だったから。


「――・・・・・・目なら覚めてるよ」

「え?」

「例え間違っていたとしても」


私はどこまで堕ちていくんだろう。

大切な友達を泣かせてまで。


「明日も、彼に会いたい」


誰かを、不幸にしてまで。