その手が離せなくて


溺れていた。

もう、彼がいない世界なんて考えられない。


「もう、遅いよ。萌」

「遅いって、何が?」

「取り返しなんて、もうつかない」


涙の膜が張ったまま、どこか自嘲気に笑う。

そんな私を見て、萌は瞳を揺らした。


「運命だって思えたの」

「――」

「そう、思える相手なの」


初めてだった。

そう想える程の人に出会えたのは。


何をしていても、彼の事を想っている。

会えない日々が心を壊していくのに、彼の笑顔を見た瞬間世界が一瞬にして輝きを戻す。


好きとか、愛しているとか、そんな言葉じゃ言い表せない。

彼が私の世界の中心で、彼が今の私を作っている。


それって、運命の相手でしょう――?