その手が離せなくて


不倫しているって言ったら、どうなるんだろう?

軽蔑されるのかな?

もう友達じゃなくなる?

――間違いないのは、賛成なんてしてくれないって事。


だけど、辛いの。

不安な事が塵の様に積もって、今にも胸が押し潰されそう。

幸せだと思えば思うほど、心は重たくなっていく。

好きになればなるほど、辛くて泣き出したくなる。

出口のない迷路の中で、心は壊れていった。

もう一人じゃ、立てないくらいに――。


「・・・・・・してないよ。不倫なんて」


静かだった部屋に私の声がポツリと落ちた。


私は弱い。

誰かに手を差し伸べてもらえるはずなんてないのに、それでも誰かに支えて欲しかった。


「私は・・・・・・」


俯いたまま、小さくそう呟く。

ようやく出た声は、あまりにも弱弱しかった。

グッと強く唇を噛みしめて、彼を想う。


「ただ、恋をしているだけ」



――ねぇ。

どうして恋は、こんなにも辛いんだろうね?