その手が離せなくて


そんな私の姿を見て、ふぅん。と言って萌は再びビールを喉に流し込んだ。

逃げるようにその横を通りぬけて、冷蔵庫から新しい飲み物を取り出す。

無意識のうちに漏れた小さな溜息を耳で聞きながら。

すると。


「ねぇ、柚葉?」


リビングの方から萌の声が聞こえて、振り返る。

視線の先にはソファに座ったまま、じっと私を見つめる彼女の大きな瞳があった。

そして――。


「私、見ちゃったの」


告げられた言葉に、思考が停止する。

ドクドクと一気に心臓が早鐘を打ち始める。


「な、なにを?」


至って普通に振る舞おうとするのに、笑顔がひきつる。

そんな私を真っ直ぐに見つめる萌の瞳から逃れる様に、口を開いた。