その言葉に瞬きを繰り返す。

それでも、言葉の意味を理解して顔を綻ばせた。


「だ、大丈夫なの?」

「何が」

「いや、その、誰かに見られない?」

「そんないい店には行けないけど、それでもいいなら」


少しだけ申し訳なさそうな顔をした一ノ瀬さんを見て、ぶんぶんと顔を横に振る。

お店なんて、どこだっていい。


「私、お腹ペコペコ」

「俺空き過ぎて吐きそう」

「何それ」

「とりあえず、食いに行こうぜ」


2人立ち上がって、大通りへと足を進める。

何を食べようか悩んでいる彼の横顔を見ながら、隠れてニヤニヤと笑う。


どうしてだろう。

ただ一緒に夕食を食べるだけなのに、嬉しくて堪らない――。