「腹減ったなぁ~」
「私、さっきお腹鳴ったよ」
既に飲み終わった缶コーヒーを並べて、そう呟く。
そういえば、一ノ瀬さんと一緒に外食した事ってあったっけ?
たぶん外食らしい外食はした事がないかもしれない。
そこまで考えて、また少し悲しくなる。
そうだ。
私達は人の多い所や、人気のお店には行けない。
どこで誰が見ているか分からないから。
いつも周りの視線に怯えている。
神経を張り巡らせて、知り合いはいないか無意識に探している。
だけど、それは仕方のない事――。
どこか悲しくなって口を噤んだ私を見て、一ノ瀬さんが顔を覗き込んできた。
そして、ニッコリと笑って言葉を落とした。
「飯でも食いに行くか」



