その言葉に一気に顔が赤くなる。

相変わらず、普通の顔してそんな事をサラッと言うもんだから毎回心臓が早鐘を打つハメになる。


「私はエサかい!」

「顔真っ赤だぞ?」

「もう、煩い煩いうるさ~いっ!」


ムキになる私の顔を覗き込んでくる彼から逃げる様にそっぽを向く。

それでも、悔し紛れに彼を睨みつけると、目を細めて私の頬を彼が優しく撫でた。


「可愛い」

「嘘ばっかり」

「ネズミっていうのは嘘。でも、好物っていうのは本当」

「も~!! そういう事サラッと言わないでっ」


再び真っ赤になった私を見て、彼はケラケラと笑いだした。

2人の笑い声が、誰もいない世界に響く。



でも、誰もいないってどうして分かる?

だって、世界はあなたと私だけじゃないんだもの――。