「よく分かったな。あのアイコンタクトで」

「ふふっ。当たり前じゃない」


2人並んでベンチに座り、貰った缶コーヒを飲む。

まだ少し肌寒いけれど、それでも春の気配がしてなんだか嬉しかった。


「仕事は順調か?」

「うん、おかげさまで。一ノ瀬さんは?」

「俺も順調かな。忙しかったピークは過ぎたよ」


そう言って、ん~っと大きく空に向かって背伸びをした彼。

その姿が、本当に猫みたいだと思って笑ってしまう。


「一ノ瀬さん、前世は猫だったんじゃない?」

「え~。じゃぁ、柚葉の前世はネズミだな」

「ネズミ!? どうして?」


ケラケラと笑う彼が、チラリと横目で私に視線を送る。

そして、首を傾げた私を見てニヤリと悪戯っ子の様な顔で。


「柚葉の事、好物だから」


サラリとそんな事を言った。