老人は、拍子抜けした。
てっきり自分が襲われるものだと思えば、人影はただ喋るだけ。
すっかり立ち直った老人は、自分の正義を語るべく立ち上がる。


「フン、正義など、金に決まっとるじゃろう。このご時世、金さえあれば何でも出来るんじゃ!人の情など屑じゃわ。金で全て、人間さえも、愛さえも買える!金さえあれば犯罪を犯してももみ消せる!世の中、金が全てじゃ!」


老人は熱く語り出す。
しかし、人影は眉をひそめただけだった。


「金じゃカネじゃ、金さえあれば何でも出来る!」


一方老人は狂ったようにカネ、金と連呼し始める。
人影は、溜息をついた。


「君も所詮、悪なんだね」


そして。


「ばいばい」


鈍い光と、大量の紅が宙に舞った。


「僕は血が怖いんだ…汚らしい、悪の結晶が」



次の日の朝、体内から血液を抜かれた一人の老人の死体が見つかることとなる。