「お金なんて盗んでどうすんのさ」

「そこらにばらまく。または、スラムの子らに配る」


ルイスの問いに、エリーは即答した。
ルイスは、エリーの答えに頭を抱えている。


「あのな、エリー?俺らは義賊じゃないんだ。よく言っても怪盗や夜盗、悪く言えば強盗犯だ。そこんとこ解ってんの?」

「どうせボク達がお金なんか持ってても使わないんだから、貧しいみんなが幸せになる方法で消費する方がいいじゃない。ボク達にはこの前の宝石も残ってるし」


どうやら、エリーは貧しい人々に幸せになってもらいたいらしい。
流石にこの答えにはルイスも呆れた。


「いや、だから、そういう問題じゃないんだって。エリー、俺らの盗みの目的、忘れてるだろ」

「忘れてなんかないよ?絶対忘れてなんかない!ボク達の目的は、警察を困らせることと、貧しいみんなを幸せにすること!そうでしょルイス!」


必死になってルイスに反論するエリーだが、やはり『幸せ論』を捨てる気は無い。


「大体合ってるけど、幸せ論は余計。目的は正確には、愚かな警官たちや警察を見て楽しむこと」


ルイスの答えに、エリーは顔をしかめた。


「…ルイス、趣味悪い。やめてよ、ボクまで変態に見られるじゃない」

「『他人の不幸は蜜の味』だよ、エリー。あと、変態は余計」

「不幸は蜂蜜の味なんかしないよ?」

「……馬鹿」


ルイスの重い溜息が空に消えていったのは、言うまでもない。