巡査という立場ながら、ジャスミン・モンレーは同僚達に一目置かれる存在だった。
真面目な彼女はみんなに信頼されているし、彼女もそれに答えていた。
…約一名を除いては。


「ジャス…じゃなかった、モンレー巡査、書類が邪魔なら片付けるのを手伝ってくれないか」


この男、ヒース・ウィルソンが、ジャスミンは大嫌いだった。

『正義』という言葉とは掛け離れた、この男が警官として同じ職場にいることがジャスミンには信じられなかった。そしてこの男が、いとも簡単に難事件を解決するのが気に入らなかった。

彼の実力は認めている。
彼がとてつもなく優秀だということも認めているつもりだ。
だが、やはり悔しいのだ。自分がどれほど努力しても届かない場所に、ひょいと手が届いてしまう彼が。


「私も暇じゃありません。今は、『泥棒双子(バーグラー・ツインズ)』を追うのに忙しいんです」


彼女の口からは、大きな溜息。


「そうか、それは残念だ」


たいして残念がってもいない様子でヒースは答え、書類を放置したまま部屋から出て行った。

ジャスミンは、ただその背中を見つめていた。
もちろん、彼女の机の4分の1は未だヒースの書類が占めていた。