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その日の帰り道。
玲斗が迎えに来てくれてたのに、私はその手を取ることができなかった。

「どうした、咲桜。なんかあった?」

「……なんでもない」

いつもなら、すぐバレるのに。
今日だけは、玲斗はそれ以上聞いてこなかった。

優しさが、逆に苦しかった。

(“好き”って、ちゃんと伝えてるつもりだったのに)

(それだけじゃ、ダメなのかな)

奪われるのが、こんなにも怖いなんて――
私、知らなかったよ。