「…乃…花……花乃!」



「…っ!」


沖田さんの声にハッとして体を起こした。


「大丈夫?魘されてたよ?」



まだあの少年の瞳に見られているようで身震いをした。


何年経ってもお父様とお母様が死んだ日と初めて 'さくら" として仕事をした日のことだけは忘れられず夢に見る。


「花乃?」


「あ…すみません。大丈夫です。」



「…そう。なら良かった。朝餉を持ってくるから少し待っててね。」


そう言うと沖田さんはそっと微笑んで部屋を出て行った。


きっと聞きたいことあるはずなのに黙ってくれているんだ。


なぜ、ここの人たちはこんなにも優しいんだろう…。

久しぶりに呼ばれる花乃という名前に心が温かくなる。