『柊!!』


泣きながら2人の亡骸に抱きつく柊の元に走った。


『自分たちから出てくるとはな。』


ふっと笑うとそいつは藤と呼ばれた男に合図した。


『やめろ!!』


柊を庇うように立ち、短刀を抜いた。


『はははっ!俺に敵うとでも思ってるのか小娘!!』


私たちは小さい頃から護身術として剣道を習って来た。まだ刀は持たせてもらえてなかったけど、これがあればきっと大丈夫。


柊を守る…!!


敵に向かって走り出そうとしたその瞬間



『うっ…!』


後ろから苦しそうな声がした。


『柊!?』


振り向くと柊が胸を押さえて苦しそうにしている。

『…う……はぁ、はぁ、おね…えちゃ…!』


『苦しいの?』


柊は心臓が悪く度々発作が起きる。


最悪なタイミングだ。


私たちの能力では病は治せない。



…いや、1つだけ方法はある。


けど、この状況では柊が危なくなる。


どうしたら…!!


『そのガキ、助けてやろうか』


バッと振り向くと壁に寄りかかり男は笑っていた。


『俺だって鬼じゃあない。殺す気もない。』



『お前が俺の仲間になって協力するっていうならそのガキに薬をやろう。』


『俺の道具になれ』


男は口角を上げて言った。


『…っ!でも!薬なんて…』


柊の心臓を治す薬なんてないはずだ。



だからお父様とお母様は…!!


『ふっ、あるさ』


『まあ、根本的な治療にはならねぇが発作の苦しみくらいなら取り除ける。』


『…っ!!』


本当に、そんな薬が…?


男は懐から小さなビンを出した。


『これがそうだ。東洋の薬品。』


『お前が飲んでみろ。』


男を睨みつけながら言った。

『おい!てめぇ!!!』


藤が怒鳴ったのを男が止める。


『いいさ。』


そのビンの3分の1ほどを飲んだが男に変わりはない。


『な?やれよ。苦しそうだぞ。』


柊は呼吸を荒くして胸の痛みに耐えている。


でも、この薬を受け取れば私は両親の仇と手を組むことになる…。


『ね…ちゃ…あぁ…っ!!』


ガッと男からビンを奪い取って柊に飲ませた。


すぐに柊は落ち着き私の腕の中で眠った。


男は満足そうに笑って言った。


『ようこそ、華龍組へ。』