その日は突然やってきた。


私たちは忍びだったのにその兆候にまったく気がつかなかった。


『旦那様!!大変でございます!』


夜中、4人で眠っていた時襖の向こうから声がかかった。


お父様が襖を開けると従者が1人いて肩から血を流していた。


『どうしたんだその傷は!』


『大丈夫です!それより、何者かが村に攻めてきました!』


『何!?』


『他の者たちも戦っておりますが…』


『村はどうなっているんだ!?』



『…火の海でございます。』



『…っ!』


忍びの村をそこまで追い詰めるなんて…。


私と柊を抱きしめるお母様の手も小刻みに震えていた。



『ここも危うくございます。どうか…!』



『すぐに行く。』



『…っ!旦那様!!』



パタンと襖を閉めるとお父様は私たち3人を抱きしめた。


『ここは危ない。逃げなさい。』


『お父様は!?嫌!みんなで逃げる!』


泣き叫ぶ私と柊の肩を掴みお父様は優しく微笑む


『花乃、柊。生きるんだ。一番大切で守りたいと思えるものを見つけるまで、生きなさい。』



そういうとお父様は忍び装束に着替えた。


暗闇に溶けてしまいそうな黒に身を包んだ。


『待って!』


声を上げだのはお母様だった


『蘭(らん)…。』


『あの時約束したでしょう』


『……。』


お母様は私たちを抱きしめた。


『お母様も行かなきゃいけないの。この村を守るため、あなたたちを守るため。…愛しているわ。』


そしてお母様も黒を見にまとった。



私たちを押入れの中へ隠した。


『ごめんね、一緒にいてあげられなくて…。』


『必ず生きるんだ。生きるんだぞ!花乃、柊を頼む。柊もお姉ちゃんの言うことをしっかり聞きなさい。…愛してる』


『愛してるわ…。』


ぎゅっと一度私たちを抱きしめると押入れは閉められた。


泣き叫ぶ柊を抱きしめて必死に涙を堪えた。


わかってしまったから。



お父様とお母様の瞳が真っ直ぐだったこと。



お父様とお母様が出て行こうとしたその時だった