そんなことを考えていると襖が開いて沖田さんがお粥を手に入ってきた。


「朝餉、持ってきたよ。」


沖田さんは私の隣に腰を下ろすと身体を起こすのを手伝ってくれた。


お粥をすくい一口食べる。


「…美味しい」


久しぶりに食べるちゃんとした食事が胃に染み渡る。


あの場所から逃げ出してからまともに食事を摂っていなかった。


ーーズキン


思い出して左腕が痛んだような気がした



「ふふっ!よかった。」


パクパクとお粥を食べる私を沖田さんは微笑みながら見ていた。


良かった。気づかれてはいないみたい。


「ごちそうさまでした。」


「食欲があって良かったよ」


空になった食器を見て沖田さんが言った。


なんだか少し恥ずかしい。


「片付けてくるね。」


沖田さんが部屋を出た後そっと襦袢の袖をまくった。


さっき、痛んだように感じた左腕


そこには桜の刺青が入っている


あいつらの仲間だった証拠の刺青


思わず触る手に力が入り爪がくい込む。


トン、トン、トン


外から足音が聞こえハッとして手を刺青から離した。


襖が開き、沖田さんが帰ってきた。


…わざと足音を立たせてた。


さっきお粥を持ってきた時はほとんど足音立てていなかったもの。


「今日は非番なんだ。ゆっくり話をしよう!」



そう言って沖田さんは私の横に座った。


最初こそ警戒していたものの沖田さんの柔らかな雰囲気に飲まれていた。


「それでね、佐之さんは酔うといつも腹踊りをするんだよ!」


「ふふっ!」


原田さんの真似をしてお腹を動かしていた沖田さんがぽかーんとした顔で固まった


なんだろう?


「花乃、笑うとすごく可愛い」


「え…?」


私、笑ってた…?


あの時から、ずっと辛かった。


笑えなかったのに…。


ふと沖田さんが真面目な顔をして一歩私に近づいた。


「大丈夫。ここには君を傷つける人はいないよ。安心していい。」


ぽろぽろと涙が溢れた


「え…私、泣いて…?」



「我慢しなくていい。よく頑張ったね。」


沖田さんは私が泣き疲れて眠るまでずっと背中を優しくさすってくれていた。