それからしばらくして沖田さんが稽古から帰ってきた。


「ただいま。ちゃんと寝てた?」


「おかえりなさい。お言葉に甘えて休ませてもらいました。」


そういうと沖田さんは満足そうに微笑んで手拭いで汗をぬぐった。


「あの、沖田さん」


「ん?どうした?」


「お疲れのところ申し訳ないんですが、屯所を案内してもらえませんか?」


「え…?」


沖田さんはぽかんとして私の方を見た。


「明日から女中として働くなら知っていた方がいいと思って…。」


やっぱり迷惑だったかな…?


「花乃、君明日から働く気でいるの?」


「そのつもりですけど…。」


「なに言ってるの!傷が治ってないのに働かせないよ!」


起こしていた上半身を沖田さんにグイッと押され、私は布団のなかに戻された。


「しっかり休んで、傷を治して。働くのは元気になってから。体も弱ってるんだからまずは元気にならなくちゃ。」


沖田さんが私の頭を撫でる。


休むなんて、そんなこといいの…?


そう思いながらも沖田さんの大きな暖かい手が気持ち良くていつのまにか眠っていた。