翌朝、ご飯の用意をしていると
僕が昨日、買って来た服に
着替えた美卯ちゃんがリビングに来た。

「心綺人君、おはよう」

まだ、眠そうな目を擦っている。

『おはよう、よく眠れた?』

あんなことが
あった後だから心配だ。

「うん、寝過ぎちゃった。

それから、お洋服ありがとう」

それくらいの方がいい。

『いいんだよ*♬೨

凌杏が洗面所にいるから
美卯ちゃんも顔を洗っておいで』

テーブルに三人分の
朝食を並べていると
二人が洗面所から戻って来た。

「美味しそう.。.:*✧」

笑ってくれてよかった(ホッ)

『沢山、食べてね』

心咲のミルクは
美卯ちゃんが起きてくる前に
飲ましたから、今は寝ている。

「いただきます」

食欲もあるみたいだし
一安心かなぁ。

*✲゚*。 ♪*✲゚*。 ♪*✲゚**✲゚*。 ♪*✲゚*。

朝食の片付けや
昼食の用意などを
美卯ちゃんは色々手伝ってくれた。

助かるし嬉しいけれど、
此処にいる二日間くらいは
子供らしくいてほしいと思った。

『美卯ちゃん、
のんびりしてていいんだよ』

多分、家では率先して
手伝いをしているのだろう。

「でも……」

兄弟の一番上だから
自分がしっかりしなきゃと
無意識に身体が
動いてしまうのだろうね。

『そうですよ、美卯さん』

書斎で持ち帰りの仕事を
終えたらしい凌杏が
リビングに戻ってきた。

「凌杏君……」

考えていることが同じでよかった。

『手伝って頂けるのは
心綺人も助かりますし
嬉しいでしょうけど、
此処にいる間は
ゆっくりしていていいんですよ』

やっぱり、
僕達は似た者夫婦だね(笑)

『ちょっと待っててください』

何かを思い付いた凌杏は
再び書斎に行き、すぐに戻って来た。

その手には一冊の本がある。

『これでも読んでてください』

タイトルを見ても僕にはわからなかった。

「え⁉
凌杏君、これ……」

その本を受け取ると
美卯ちゃんの目が輝いた。

『そうです、彼の新作ですよ』

二人は共通で
好きな作家さんがいるんだね。

『差し上げます』

おや、もう一冊あるのかな?

「凌杏君はもう読んだの?」

美卯ちゃんもそう訊いたものの
気付いているだろう。

本は明らかに新品だ。

僕達が疑問に思っていると
凌杏は予想の斜め上をいく
爆弾発言をした‼

『いえ、ですが、彼に頼めば
送ってくれるでしょうから』

え? どういう事?

「知り合いなの?」

うん、美卯ちゃんの質問は正しい。

『えぇ、友人の兄ですから』

凌杏はサラッと二度目の爆弾を落とした。

僕達の驚きも
何処吹く風といった感じで
電話をし出した。

『〈お久しぶりです。

例の新刊、一冊送って頂けませんか?〉』

『〈買ったんですけど
あなたのファンの方にあげてしまったので〉』

察するに
今美卯ちゃんにあげた本を
買った時にその旨を伝えていたのだろう。

『〈今からですか?

わかりました、引っ越したので
◆◆駅で待ち合わせしましょう〉』

ため息を吐いて電話を切った。

『すみません、心綺人、
彼を迎えに行って来ます』

お財布とスマホを
ポケットに入れ玄関に向かった。

『気を付けてね。

お茶の用意して待ってるから』

◆◆駅は家からそんなに遠くない。

歩いて二十分くらいだ。

『ありがとうございます。

あなたは本当にいい奥さんですね』

玄関を開ける前にキスをしてくれた。

凌杏の友人の兄で
作家だという彼は
わりと気さくな人だった。

歳は僕の一つ上らしい。

挨拶は軽く済ませた。

泊まりに来てた
美卯ちゃんにも優しく接し
凌杏があげた本にサインを
してあげていた。

美卯ちゃんが
寝た後のその日の夜。。。

*✲゚*。 ♪*✲゚*。 ♪*✲゚**✲゚*。 ♪*✲゚*。

『遊羽は元気ですか?』

状況からして
彼の弟で凌杏の
友人のことだろう。

「変わらず元気さ。

凌杏が結婚して
父親になったなんて
知ったらあいつは吃驚するだろな……

しかも、相手は同性だしな」

最後の言葉にビクッと
肩が小さく跳ねた……

最初に挨拶した時も
今の台詞にも嫌悪感は
ないのはわかっているけど
マイノリティな僕達の結婚は
後ろめたさが付きまとう……

『でしょうね(クスッ)

私達が中学の頃、大人になって
一番最初に結婚するのは誰かって
三人で話していたのを覚えてますか?

ん? 心綺人?』

話していたのに僕の
小さな異変に気付いてくれたらしい。

『なんでも『なくないですよね』』

珍しく、途中で遮られた。

『心綺人、
結婚する時に言ったはずですよ。

何かあるなら
隠さずに言ってくださいと』

確かに約束した。

『それとも、
今、此処で彼の前で
躯に聞いてもいいんですよ?(ニヤリ)』

耳元で囁かれた言葉に
僕は俯いていた顔を上げた。

『凌杏⁉』

実際にはしないのは
わかってるけど
一瞬、怖いと思ってしました……

『冗談ですよ(笑)

あなたのあんな可愛らしい姿は
誰にも見せるつもりはありませんから』

本当に、
こういう時は意地悪なんだから……

『大丈夫ですよ。

あなたと心咲は
何があっても私が守りますから』

そして、勘がいい。

「あ、悪い」

僕達の雰囲気から
彼がさっきの自分が言った台詞を
思い出して謝って来た。

『いえ、僕が勝手に
不安になってしまっただけなので
気にしないでください(苦笑)』

凌杏に抱きしめられて
僕の心は落ち着いた。

結局、朝方まで三人で話した。

この時はまだ、
あんなことが起きるなんて
思いもしなかった……