本日、結婚いたしましたが、偽装です。


「佐藤が今食べたいものも知りたいから、それもついでに教えてくれ」


佐藤と食事に行けるということと、佐藤の好みを知れるということに心が弾んでいる。


しばらくの間、佐藤は逡巡してから、おずおずと口を開いた。


「えっと…、好きな食べ物は肉です。ですけど、今、実は…、食欲があまり無くて」


……えっ?


食欲が無い……。


それじゃあ、食事には行けないということだな。


弾んでいた心が、静かになっていくのが分かった。


決して、佐藤に食事を断られたからではない。


佐藤と食べに行けないと思ったからではない。


食欲が無いということは、それだけ調子が良くないということか……?


確かに、ここ最近残業続きで、その上この厳しい寒さだから体調を崩してしまってもおかしくはない。


……少し考えれば分かることなのに、佐藤と一緒にいたさで一人で浮かれて突っ走ってんじゃねえよ、俺。


俺は、幼稚で考えが至らない自分に深く吐息をつくと、眉根を寄せた。


「そうか…。すまない、悪かったな。勝手に誘って無理させようとして」


佐藤が泣いていたからと一人にしたくなくて食事に誘っても、夜遅くまで付き合わせることになって無理をさせてしまうのはかえって、佐藤を疲れさせてしまう。


泣くくらい辛くて大変なら、残業をさせた挙句食事に誘うのではなく、このまま家に帰らせて早めに休ませた方が最善だろう。


無理だけは、絶対にさせたくない。


上司として、その前に一人の人として、そう思うのは当然のことだ。


なのに俺は、佐藤が食欲が無いと言うまで気付かず、ワクワクしてどこかに行こうかなんて能天気に考えていたなんて……。


俺は更に眉間に皺を寄せて、自分に怒った。


「す、すみません。課長のせっかくの誘いを断るなんて失礼ですよね。でも、本当に、食欲があまりにも無いので…」


すると不意に、佐藤の慌てる声を聞こえた。


……ん?