「やっぱり、俺、結婚なんて無理だって、深雪にプロポーズしてから気付いたんだよ。
他の奴らはまだ趣味とか仕事にかまけてるのに、俺だけ結婚ってまだ早いんじゃねえかって、気付いたんだよ」


なにそれ、どういう意味?



「でも、結婚しようって言ってくれたよね」



「言ったけど、俺は本当は、そんな気無かった。深雪が結婚結婚って言ってたから、プロポーズしたんだよ」


幼い頃から幸せな家庭を築くことと、それから心から愛されて、愛する大好きな最愛の人との結婚を夢見ていて、子供染みているかもしれないけれど、社会人三年のOLになった今でも、密かに強く夢見ていた。


人一倍結婚願望が強くて、やっくんには付き合い始めた時から、いつかは私は結婚したいと、呪文のように言っていた。


それに応えてくれたやっくんに、ドライブ中に夜景の見える丘の上で、車の中で指輪の入った箱を出されてからの、プロポーズの言葉なんていう、ベタ中のベタのプロポーズを受けた。


『結婚、しようか。深雪、ずっと言っていたし、俺も思っていたから。ずっと、一生一緒にいよう、な』



そう言ってくれたのに、その言葉は全部、嘘だったの?



俺も思っていたって、私と結婚したいって思っていたという意味じゃないの?



私に嫌々、本当は結婚なんてしたくないけど仕方なく、みたいな、そんな気持ちであの言葉を言ったの?



だったら、プロポーズなんて、してくれなくて良かったのに……。



婚約しなければ、私が、わざと言わせたんだみたいな事をやっくんに言わせることも無いのに。