「おい、ここ、間違っている。一桁多い。一番初めからもう一度よく見直せ。それから、こことここも間違っている」


佐藤の様子がどこか違うと思いながら、俺は自分の早めに終わらせたい仕事をするついでに、佐藤の仕事を見るために、残業をしていた。


佐藤が入力した簡単なデータの記録を確認するため、俺はデスクに座る佐藤の背後に立って、パソコンを見る。


こうして佐藤と残業をするのは、あまり無いことだった。


時間内に終わらせるのは、ウチの会社の基本だった。


繁忙期や、プレゼンが重なった時、棚卸しや取引先からの要望で至急の終わらせなければならない仕事が入った時以外は、残業はしない。


だから佐藤も、その日一日のうちに仕事を終わらせ、残業はしないで終業時間に退社をしていた。


だが、ここ一週間は、佐藤の仕事の進め方が普段より遅かった。


それから、時間内に片付けれるはずの仕事を依頼しても、どこか上の空で、頼んだことと違うことをやったり、仕事をしているなと思ったら、手を休めてぼうぜんとどこかを見ていたりして、全く仕事が出来る状態ではなかった。



おいおい、大丈夫か?


佐藤に何があったんだと思いながら、そう心配をする。


人のことを気にして、心配をするのも、初めてだった。