やっくんが、なんでそんなことを突然言い出すのか、訳も何も分からなかった。


「別れて…って、どうして…?」



やっくんの顔を真っ直ぐ見つめながら、震える声で訊く。


「俺、他に好きな子ができたんだよ。だから、もうお前とは付き合えないし、結婚も無理」



やっくんは躊躇も言い淀むことも無く、私に冷たく言い放った。


私は頭から氷水をバケツ何十杯もかけられたみたいに、嫌な驚きとショックで固まる。



「好きな…子…? だって、私達、結婚するんだよね?なのに、好きな子って、別れてくれって、何?」



鼓動が嫌な感じに大きく高く鳴り響いて、喉はカラカラに乾燥していて、全身から血の気が引いていく。



小刻みに震える手をぎゅっと握りながら、婚約者に別れを切り出されているという、先程まで予想だにしていなかった目の前の現実になんとか目を向ける。