とにかく沢山ある工具の名称を一つ一つ入力するのが、大変だった。


名称入力後は、在庫数と単価の数字の入力間違いさえしなければ、パソコンで計算して在庫評価額が出るのだけれど、そこまでいくのに時間がかかる。


ドリルだけでも、充電式の電動からエンジンまであって、用途は同じでも原動力の違いで製品の名称が違うのでややこしい。


充電式のインパクトドライバ、(ドリルに色んな種類の名称や各々に違う性能があることを、入社してから初めて知った)、ドライバドリル、インパクトトレンチ、アングルドリルに、後は、エンジンドリルなどなど……。


インパクトドライバとドライバドリルの何が違うのと思いながら、日々工具の勉強をして、こうして在庫票の作成時に格闘している。


キーボードとマウスを動かす手の動きを止めないようにしながら、斜め前の席をちらりと見る。


羨ましいくらいの速さでキーボードをタイプする課長がいた。


そして、私の視線に気付いた課長が、画面から顔を上げる。


っ!


「佐藤、どうした?」


「あっ、いえ、なんでもありません」


私は咄嗟に顔を俯かせ、パソコンに視線を戻す。

だけど、戻したはずの視線は、また課長の方に向かってしまう。


藤本さんが言っていたことは、本当なのだろうか?