「えっ……?そう、だったの……」
藤本さんは、美しい形に整えられた眉根を寄せて、悲壮な表情を浮かべた。
「私ったら、何も知らずうっかりと。……でもそうだったのね。ずっとその間来ないと思っていたら、そんな事が……。だから、辛くて、来れなかったのね、ここに」
私は俯いて、こくんと頷いた。
「はい。本当に毎日辛くて、食欲無くて、社食に来れる気力も無くて……。でも、なんだか今日は、気分も軽くて、空腹も感じるようになって……」
「そう、それは良かったわ。どんな別れでも、辛いものよね。分かるわ、ご飯食べれないくらい辛い気持ちは。でもね、何事も、そういう恋愛のことも、人生経験と思うと、不思議と前に進めたりするのよ。今すぐは無理でも、その一つの恋が人生の経験値を上げて、成長させてくれて、次にやって来る恋の後押しをしてくれたりする。だから、辛い時を乗り越えて、前より成長して強くなった佐藤さんには、きっとこの先いい事があるわよ。……大丈夫」
『人生、辛いことも楽しいことばかり。それが自分を成長させ、強くする。だから、メソメソしてばかりじゃダメ』
いつか、たまきに言われた言葉を思い出した。
どうしてここで、藤本さんはたまきと一緒のようなことを言うのかな?
私と友達になる人が、みんなタイプが似ているのか、それとも私が、似たような人と友達になるのか、分からない。
たまきにそう言われた時も、私は元気付けられた。
だけど、こうして藤本さんに言われて、もっとそれ以上に元気づけられた。
苦い気持ちと、嬉しい気持ちを噛み締めながら、私は前に進むべく、食事を平らげた。
