「そう。ああ、そういえば、佐藤さん、よその会社の人で彼氏がいるものね。それなら、どんなにイケメンでも鬼頭さんのこと、眼中になくても当たり前か」
『彼氏』
そのワードに、私の意識が敏感に反応する。
藤本さんは、一応私に彼氏がいることは知っていた。
ある時、ふとした話題の弾みで、私が言ったのだ。
でも、婚約中だと言うことは教えていなかった。
やっくんが、『まだ他の人に、俺の知らない人とかに言いふらすな』と言ったから。
まだ両家の両親に挨拶に行っていないから、婚約が本決めになっていないから、そういうことを言ったのかと、当時はそう解釈して思っていた。
でも、今思えば、私の解釈と、やっくんの真意は全く違うような気がする。
「……藤本さん、あの、」
「ん?なぁに?」
隠すようなことでも無いと思った私は、深呼吸をしてから、意を決して口を開いた。
