「……やっぱり、本当なんですか?本当に課長は、私のことを……?」
「……ああ。佐藤とよくいる藤本さんにお前のことを聞いていたのは、本当だ」
「どうして、ですか?」
どうしてなのか、それはもちろん決まっている。
その質問の答えがすぐに喉まで出かかったけれど、慌てて飲み込んだ。
言って、どうなることじゃないとすぐに考え直した。
……俺の気持ちをぶつけたところで、佐藤を困らすだけだ。
それから、今のようにたとえ上司と部下という深くも浅くもない関係だけでも近くにいられるのなら、その関係を壊す勇気はなかった。
何よりも、俺の気持ちをぶつける勇気と度胸がなかった。
昼間は龍御寺の前で高らかに宣言したくせに、途端にこうなってしまう。
“言うは易し行うは難し”だとは、まさにこの事だ。
「……どうしてなのか、理由を教えたところでどうなるわけでもないだろ。もういい時間だ。残りの仕事切り上げて、もう終わりにしていいぞ。お疲れ」
どこまでもヘタレな俺はそう言って、手早くパソコンのバックアップを取った後に電源を落とし、ビジネスバッグを持つと席から立った。
見透かされたくないという焦りと不安を感じて、それさえも知られたくないと思って、今すぐに佐藤から離れたかった。
