それからは、普通通りに仕事をした。
午前に起きた工具の不具合の報告を受けて、とりあえず不具合はすぐに解決したらしく大きな問題にはならなかったけれど、今後このようなことがないよう再発防止に努めると、製造部の担当者に伝えるよう社員に指示を出したり、来週から始まるプレゼンの準備を進めているとすぐに終業時間になった。
消灯時間間近の薄暗いフロアで、また今日も佐藤と二人きりで残業をした。
問題が一つ起きると直ちにその事を事細かく社長に報告しなければならない決まりなので、他の急ぎの仕事をしてから報告書を作成していたら業務時間外になってしまった。
社員になってそれなりの年数が経つと任される今日分の在庫表を作成する、パソコンの光に白く照らされている佐藤をチラリと盗み見る。
……あー、綺麗だ。
いつもこんなに近くにいるのに、触れるどころか易々と近づくことも出来ないなんて、地獄だ。
いや、今は考えるのはよそう。
今は目の前の作業に集中すべきと、佐藤のことが気になって仕方がない意識を集中させる。
それから少しして、何かの気配のようなものを察知してパソコンから顔を上げた。
佐藤の方を見ると、佐藤が俺のことを見ていた。
ドキッと、鼓動が高鳴る。
こうして俺のことを視界に入れてくれるだけで、嬉しくなってしまう。
だけど、何の理由もなく見ているはずはないと考えた。
「佐藤、どうした?」
努めてポーカーフェイスで、佐藤に訊く。
「あっ、いえ、なんでもありません」
すると佐藤は、咄嗟に顔を俯かせてパソコンに視線を戻した。
