俺は藤本さんに会うと……特に佐藤のいるときに会うと少しの緊張に包まれる。
それは、少し前から……いや結構前から藤本さんに佐藤の情報を提供してもらっていたから。
我ながらストーカーでドン引きされる行動のようにも思うが、本人に直接、趣味や嗜好などを聞き出す勇気が無い俺は、会社の中では一番付き合いのある藤本さんに佐藤のことを色々と訊いて、教えてもらっていたのだ。
ちなみに、佐藤と一番付き合いのある社員が藤本さんと分かったのはずっと佐藤のことを見てきたからだ。
そして俺はもちろん、佐藤に婚約中の彼氏がいることも教えてもらっていた。
藤本さんは初めは怪訝そうにして、佐藤の情報を教えてくれなかったけれど、何度も懲りずに諦めずに聞き出す俺の“本心”を見抜いたのか、少しずつ教えてくれるようになった。
佐藤は肉が好きみたいで、甘いものも好きみたいだけどかといって辛いものの嫌いではないみたいで。
それから猫が好きで、実家で飼っているらしいことも、だけど彼氏が猫嫌いだからどうしようと困っていることも。
それからそれから、婚約中の彼氏とは三年間付き合っているということも。
ある時、佐藤のいないところで情報を教えてもらった時に藤本さんにこう言われた。
『熱心に聞いてくるのはいいですけれど、その気持ちはどうするんですか?深雪ちゃんに打ち明けるんですか?でも、彼女は結婚してしまうのよ。言ってしまうけど、不毛ね……』
