もう用は終わったはずなのにまだ自分の会社に帰らない龍御寺と会社に戻ると、藤本さんとばったり会った。
「あ、美麗ちゃん〜。今日も綺麗だね〜」
龍御寺がいつものように、藤本さんに馴れ馴れしく声をかけて近づく。
……いつも龍御寺は恥ずかしがることもなく、挨拶のように綺麗だとか言えるのは、もはや一種の才能だなと思っている。
「ふふ、ありがとうございます」
藤本さんが微笑んで、軽くかわすのもいつものことだった。
「先ほどはしっかりと挨拶出来なくて申し訳ありませんでした。お二人は、今ランチを?」
「そうなの〜。外で済ませたところ。美麗ちゃんは?」
「私は、みゆき……あ、佐藤さんと社食を」
俺は、彼女の言った『佐藤さん』が誰なのかすぐに分かった。
「あ、そういえば、龍御寺さんはお会いしたことなかったですね。鬼頭さんと同じ部署の女性です」
気を回して藤本さんがそう説明をすると、龍御寺は一気に悩み事から解放されたような表情をした。
それからすぐに、不意に藤本さんの後ろの方を見ると笑顔で手を振った。
「あっ、深雪ちゃんだ〜。同じ日に二度と会えるなんて、なんか不思議だね〜」
龍御寺の視線の先には、佐藤がいた。
つい先ほどまで話していたせいもあって、佐藤の姿を見ただけでドキッとする。
龍御寺は油断ならないもので、その間にも妙に愛想の良い笑顔を浮かべて佐藤に近づいていった。
俺は、近づけるものかとすかさず、さりげなく後を追う。
「鬼頭さん、少しよろしいですか?」
不意に、藤本さんに呼び止められる。
内心佐藤に妙に馴れ馴れしい龍御寺のことが気が気ではないけれど、それを隠して藤本さんに『はい?』と応えた。
