あんなに綺麗で可愛くて魅力的で、完璧な女だったら、男の一人や二人いたっておかしくはない。
だから、俺の気持ちは一方通行ということだ。
永遠に叶わぬ“恋”ってわけだ……。
「あー、付き合ってる人がいるのかぁ。それは、まあ難しいよね。一瞬、取っちゃえば?って思ったけど、鬼ちゃんはそういうことは嫌だもんね〜」
相手から佐藤を奪いたい気持ちは、無いとは言い切れない。
けれど、それはいい手段とは思えない。
佐藤がその相手といて幸せなら、俺は邪魔をしてはいけない。
取るとか奪うとか佐藤はモノではないし、それに誰も“幸せ”にはならないから。
……取る側はともかく、奪われた側の気持ちはよく分かるから。
「そういうのは、誰も幸せにならねえからな。どっちも苦しむと思う」
俺は、お茶を一気に飲み干すとパートさんにおかわりをもらう。
「幸せ、ね〜……。鬼ちゃんって、案外ロマンチストだよね」
龍御寺は、空っぽになったどんぶりを置いた。
「あー、美味しかった。じゃあ、鬼ちゃんはずっと片想いのままでいいってことなの〜?」
「ああ。それでいい。今も、これからも。今の関係を変えるつもりはない。たとえ、ただの上司としか思われていなくても、近くでいられるだけでいいんだよ」
そう言ってから、自分の言葉にハッとした。
顔が熱くなる。
