気を落ち着かせて、また仕事の時の気分に切り替えると真っ先に佐藤のデスクに向かった。
腕時計を見ると納品書の期限はギリギリに迫っていた。
すると、佐藤もそれを気にしていたのか俺が戻って来たことに気付くと、真っ先に納品書のコピーを見せた。
俺はパソコンの本日納品予定の工具のデータと照らし合わせて、慎重に目を通す。
……よし、よし、さっき間違えていたところも全て、大丈夫だ。
やればできるじゃないか、佐藤。
信じて良かったと嬉しい気持ちを抱いて、俺は不安顔の佐藤にコピーを返した。
「ミスは無いな。これなら大丈夫だ」
俺が言うと、佐藤は不安顔から一転、ぱあっと明るい笑顔に変わった。
……うっ、不意打ちで明るい笑顔は心臓に悪い!
「あ、ありがとうございます!じゃあ、納品書に課長と部長の印鑑もらったら、急いで出荷部に出してきますね」
佐藤は俺に頭を下げてから、納品書の作成の最終段階に取り掛かる。
表情がころころ変わって、気持ちの変化がわかり易くて、仕事に真面目で、礼儀作法が完璧で、笑顔が可愛くて……ほんと、いい女だよな。
佐藤が作成した納品書に印鑑を押して、部長の印鑑ももらってから一階の出荷部に行こうとする佐藤を目で追いながら、そう思っていた。
「佐藤、」
それから、営業のフロアを出て行こうとした佐藤を引き留める。
「あー、提出したらそのまま休憩に入っていいからな」
「あ、分かりました。ありがとうございます」
佐藤はぺこりと頭を下げてから、少し駆け足で出て行った。
……あーあ、またランチに誘えなかったよ。
別に龍御寺のことは、放っておいてもどうとでもなるのに……。
ヘタレな俺。
佐藤だって、わざわざ言われなくても提出してから休憩に入っていいことくらい分かっているはずだ……。
気持ちや思考と裏腹にどこか空回りする自分に苦い気持ちになりながらも暗い表情が少ない佐藤に安心感を抱いて、昼休みまでの少しの時間、仕事をした。
