……えっ⁈
不意に、図星を突かれて俺はその場に硬直した。
……このおっさん、普段はおちゃらけているばかりいるくせに、たまに妙に鋭い時があるな……。
企業を束ねる社長と思えばそういうところがあっても当然だと思うが、不意打ちに自分の秘めた内側を突かれると驚きと狼狽でとっさに言葉が返せない。
いや、だが仮に、ここで“俺の好きな相手”を打ち明けたとして、その後の展開は目に見えている。
きっと、他の会社との連携を強化する話よりも人のそういう色恋系の話の方が大好きな社長と、興味本位で何かと関わってこようとする龍御寺は、必ず、面白半分で芸能リポーター並みに質問責めしてくるに違いない。
そして、憶測と偏見で色々と解釈して、茶化してくるに違いないだろう。
俺は、短く深呼吸をしてから、狼狽を隠すと振り返った。
案の定、社長も龍御寺も揃いに揃って、好奇心を含んだ目をして、ニヤニヤ笑っていた。
……絶対、本当のことは言ってやらん!
「好きな人……?そんな人はいませんよ。今は仕事で手一杯でそれどころじゃありませんから。ただ、相手に失礼ですから中途半端な気持ちで縁談は受けたくないという理由で見合い話を断っているだけです。それだけですよ」
俺は、努めて冷静な声で落ち着いた口調で言った。
社長と龍御寺は顔を見合わせると、どこか不満げな表情をした。
「なぁんか、模範的回答。そう思わない?りゅうりゅう?」
「うん。そう言うと思っていたけどさ〜……。本当に、好きな人とかいないの?好きな人がいるから断っているんじゃないの?」
龍御寺はソファーから立ち上がって、俺に近づいてくる。
俺は、じりじりと詰め寄ってくる龍御寺の妙な根拠に基づいているような気がしてならない質問に少しだけ狼狽して、一歩後ろに下がる。
「っ、なんだよ、しつこいな。だからいないって言ってるだろ」
「でも〜、いつまでも“仕事”を理由にしていても、おばさん達は納得しないと思うよ?それにさ〜、好きな人とがいいって言い続けても連れて行ったりしない限り見合い話はまたこれからも来ると思うよ?……それから、僕は本当は鬼ちゃんに好きな人がいるってこと、知ってるから」
