本日、結婚いたしましたが、偽装です。



「鬼たんには、限定発売の店舗限定の、あの超レアキャラのキジミケ大魔王が手に入らない辛さ、分からないの⁈」


社長はいい歳を過ぎた中年の親父なのに、駄々をこねる子供みたいに言った。


「分かるはずありませんよ!ていうか、分かりたくありません。……恥ずかしい」


俺は、元は凄腕の営業マンで会社に貢献し、今もその成果がかられて社長の椅子に就きそれなりに社長としての仕事をしているはずの社長のこういう残念のところにこめかみを押さえて溜息を出す。


「それに、『複雑すぎて、僕はファミコンしかいじれない〜』って言っててパソコン操作出来ないんじゃありませんでしたか?なのに、『ネット販売はしてないの』って何ですか?」


社長が先ほど言った言葉に不審な点を見つけると、俺は追求する。


社長は窓辺のごつい革の椅子に座ると、しばらく視線を泳がせてからすぐに観念したのか口を開いた。


「実はぁ、キジミケ大魔王以外のにゃわいいニャンコ勇者達のグッズをその……ネットで購入してまちた」


全く悪気のない社長の態度に、堪忍袋の緒がブチリと切れた。


「はあ⁈そんな、猫だかたぬきだか知りませんけど、」


「鬼たん。たぬきじゃないもん、猫だもん!」


「どっちでもいいわ!そんなもん買うためにパソコン使ってるならもっと仕事で使って下さいよ!それで、最新のシステムを導入して決算や棚卸しの作業をコンピューターでやってもっと作業を簡素化して下さい!一々手動でナン億単位の工具を一つ一つセルに入力すんの、大変なんです!社員はただでさえ他の業務で手一杯なんですよ」


俺は、テーブルに両手をついて常日頃から思っていたことを社長に直談判する。


「それは分かっているけどぉ、ずっと言っているけど最新システムを導入するのに費用が足らないんだよ〜。全部署に導入するとなるとその機器の代金に始まって接続作業を頼む会社にもその作業費を払わなければならない。それにその作業の間、肝心なコンピューターが使えなかったらまともな仕事が出来ないよ」


「なら、複数人で一つのパソを使えばいいだけでしょう。普段からほぼ同じデータをパソ間で共有しているのですから。それに必要なデータはバックアップしてありますから容量が足りなくて電源が切れても消える心配もありません。それから、パソを使わない仕事も沢山あります。特に製造と物流部は人手が足りない状況です。人手が余る事務をそちらに回せばパソを使わない社員が増えます。考えれば、何とかなるものだと思いますが」


「じゃあ、費用は?どこから捻出するの?」


「その為の銀行があるじゃないですか。もしどうしても会社の積立金だけでは足りないなら融資を受ければいいでしょう」


「融資……かぁ」


「ですが、どうしてもの場合ですよ。融資は最終手段としてまずはウチの会社の経済状況を見直してみてはどうでしょう?余分な出費や不透明な支出がないかどうか、経費の無駄をなくすんです。そうすれば経費で落とせるんじゃないですか?……まあ、社長あなた本人がそういう変なグッズを経費で買っているならまた話は別ですがね」


俺はテーブルから手を離すと、社長を怪訝な気分で見下ろした。