「モテる女は大変だねぇ」


ぱたぱたと走っていった女子二人を遠目で見ながら杏は腕を組み頷いている。


「別に大変じゃないさ。応援してくれる人がいると言うことはありがたい」


少し乱れた胸元の真っ赤なリボンを整えながら再び歩きす。


「ひぇ〜。さすがイケメン」


私の隣で歩きだした杏が、少し舌を出した。


他愛もない会話をしながら歩いて購買に着いた。


杏はデミグラスソースのオムライス、私は野菜サラダを頼んで向かい合わせの席に座る。


手を合わせてスプーンを掴んだ杏は私の野菜サラダをちらりと見て顔をしかめた。


「げっ、まさか、お昼それだけ?もしかしてダイエット?」


「いや、もうじき部活の全国大会なんだ。太ったら動けなくなるからな」


そう答えて私もフォークを握り、レタスにぐしゃりと突き刺す。


「ストイックだねぇ。それ以上痩せてどうするのさ」


「え?」


ぴたりとフォークを持つ手が止まる。


呆れた様に眉を下げる杏。


自分は最近体脂肪率が15%を超えたから、朝はエネルギーゼリー、昼はサラダかおにぎり、夜はなるべく炭水化物控えめで筋トレしているのだけど。


それを伝えると、杏は「いや、15%ってかなり少ないと思うけど!?」と目を見開いている。


「あたしなんて普通に20代なんだけど」


「杏は吹奏楽だから問題ないだろ」


「まぁね。でも最近体重やばくて」


「何キロ」


「49キロ」


「安心しな、私は58キロだ」


「だってつばさは全部筋肉じゃん」


杏の即答に思わず笑ってしまう。


「羨ましー」とうなだれている杏。


「思春期は体重が増えやすいからそう気にしなくていい。それに杏は見た目そうでもないから大丈夫だろ」


杏は身長が165センチ前後だから、50キロ近くても全く問題ないと思う。(ちなみに私は168センチ)


なんとなく思ったことを言ったら、杏は「そうー?そうかなー。ありがとー」と言うとにっと笑った。


私は頷いて、トマトを口に運ぶ。