記憶を失くした少女【完】




「…………………………え?」


一瞬にして教室が静まり返る。

もちろん視線は一気に出入り口のドアに向けられた。


『すげぇー!RYUSEIの幹部がここにいても、いなくても、くる確率少ねぇのに総長単独で来たぞ!』


『やっぱかっけぇー!憧れるわ!!』


『やばぁ~い!マジイケメン♪』


そんな声もコソコソ聞こえてくる。


私の前にいるギャル達はポカーンとして、そんな遥輝を見ていた。


状況を把握するかのように、辺りを静かに見渡す遥輝。


そして、最後に私と目があった。


目があっただけなのにゾワッとする。


何だろう、これ……………。


「何してんのお前ら?」

目があったと思ったのは違ったみたいで、前にいたギャル達に向けられてた視線らしい。


軽く殺気の含まれた威圧的な声……………。

これ聞くの2回目……いや3回目?だけど、それでもやっぱり怖い。


女たちは訳がわからないと言ったような顔をしているが、その顔は恐怖で引きつっていた。

「あの…………遥輝様……」

「既読無視かと思えば、お前らがケータイ取ってたのか。さっさと返せ」

「す、すいません……っ」


あんなに強気だったギャルはそんな言葉で、遥輝にケータイを手渡した。


私が言ったときは返してくれなかったくせに…………。


「ケータイ戻ったし、ほら行くぞ」

「え?………あ」

遥輝は私の腕を掴んで歩き出した。


その時、教室から悲鳴が聞こえる。


「なんで!!?どうゆうことなの!!??」

「どうゆう関係!?」

「わけ、わかんない!!!」


いや、私の方がわけ分かんないから!