記憶を失くした少女【完】


助けてもらって最後に無視をするわけにもいかず、取りあえず背を向けたまま立ち止まる。



「………………………なに?」


「こっちむけよ」


「………………」

そう言われて渋々後ろを向く。


よく周りを見てなかったからか、それともこの人を見てなかったからか。真正面でみた蘇芳遥輝は不思議とこの繁華街に馴染んて見えた。


学校とはまた一段と違う雰囲気で、なんというか………………大人って感じ。

「お前さ、よく色んな輩に絡まれんじゃん?」

「……………え?まぁ……そうね」

「それに、ご飯も1人だし」

…………………つまり何をいいたいの?

ボッチと言いに立ち止まらせたの??


でも、嫌味を言うには重すぎるというか、何か大切なことを言おうとしている雰囲気の方が近く感じた。


「つまり…………俺らの『仲間』になんねぇか?」


最後に出てきたそんな言葉。


………………………俺らの、仲間?


「俺らならお前を守れる」

………なんで、私を守るの?

関係ないじゃん。


っていうか。


「あなたは一体何者なの……?」


みんなが言ってたRYUSEIじゃ、ないよね?


私、RYUSEIの人に恨まれてんだから!


蘇芳遥輝は少し驚いた顔をしたあと、落ち着いた声でこう言った。


「RYUSEIって族の総長」

顔がなんかドヤ顔気味………………………って、え!!??


はぃ!!???


「そ、総長……………っ!!!!???」


まさかの、RYUSEIの総長………………………。


え、ていうか…………この状況ヤバイよね?

だって、私が姫に嫌がらせをしてたというRYUSEIの人でしょ?


記憶喪失だって、総長の意味は分かるよ、そりゃあ。